Jリーグが目指すアジア・グローバル戦略|B2Bマーケティング エージェンシー、Bigbeat Bangkok

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グッドモーニング バンコク!

2021-9-17

Jリーグが目指すアジア・グローバル戦略



【Bigbeat LIVE ASEAN Vol.1】
「Jリーグが目指すアジア・グローバル戦略」


私たちは、これまで、「マーケティングで経営を変える」をテーマに、経営のおけるマーケティングの重要性をお伝えして参りました。
今年は、この文脈から、昨今の閉塞感を突破するために、グローバル、とりわけタイ・ASEANでのビジネスの可能性をお伝えし、マーケティングという機能を活用したグローバルビジネスへの必要性と日本企業の未来を伝えたいと思い、「Bigbeat LIVE ASEAN」を8月より11月まで計4回の開催をいたします。
第1回の「Bigbeat LIVE ASEAN vol.1」の特別セッションでは、株式会社Jリーグ グローバルカンパニー部門の小山 恵さんをお招きし「Jリーグが目指すアジア・グローバル戦略」についてお話しをお伺いしました。


Jリーグでは、早くも2012年からアジア戦略、とりわけASEANエリアを中心とした事業展開をスタートしています。日本のプロサッカーリーグとして唯一無二の存在でありながら、なぜASEAN進出へと舵を切ったのでしょうか。その背景には、国内のすべての企業にとって他人事ではない日本の社会的・経済的動向と、ASEANに秘められた成長可能性が関係していました。


成長しつづけるASEAN

小山さんは、開口一番、Jリーグがアジア戦略に踏み切った背景として「日本市場だけではもはや大きな成長が描けないこと」を挙げました。

「これから日本の人口が減っていくの明白。一方、ASEAN、特にベトナム・タイ・ミャンマーでは人口は軒並み増加し、経済規模の成長率も非常に高い。Jリーグとしても市場として取り込んでいけないか、といったところが大きな背景でした。」

小山さんはアジア戦略にあたり、国内のあらゆる企業にとっても看過できない「日本市場の縮小化」と「ASEANの成長可能性」に加え、「Jリーグは、ASEAN諸国の圧倒的なサッカー人気と、サッカーレベル向上の伸びしろに注目した」といいます。



2021年8月のFIFAランキングによると、ASEANではベトナムがかろうじて100位を切っている(92位)以外は、どこも100位以下に位置しているものの、性別や年代を問わず多くのファンを獲得している点で共通しています。一方、タイやマレーシアに勝てない時代が続いた日本は、1993年の国内初のプロリーグである「Jリーグ」発足をきっかけに、現在までの約30年で急成長を遂げ、今やアジアでトップクラスの24位にまで登りつめました。小山さんは、「ASEAN諸国への視察を重ねるうちに、アジアの多くの国々がJリーグや日本サッカーのもつ『短期間で急成長するためのノウハウ』にとても強い関心を寄せていることがわかってきた」と、その手応えを語ります。



「グローバルのサッカーマーケットの中では、アジアのマーケットはまだまだ小さい。だからこそ、Jリーグの海外市場、特にアジアでの事業構築・収益化に加えて、Jリーグのマーケティング・運営ノウハウを提供することで、アジアサッカー界全体のレベルアップとマーケット拡大に寄与していきたい。これがアジア戦略の根幹にありました」


前例がなければ、まず「成功事例」を

それでは、Jリーグは具体的にどのようにアジア戦略を進めたのでしょうか。
小山さんのお話では「パートナーシップの締結」「ASEANへのJリーグ放送エリア拡大」「SNSの活用強化」の3点が挙げられました。

「パートナーシップの締結」とは、ASEAN各国のプロリーグとパートナーシップ協定を結ぶこと。この協定によって、Jリーグのもつマーケティングや運営のノウハウの共有がスタートします。また、2014年には「提携国枠」が導入され、外国人であるASEAN諸国のスター選手がJリーグにおいても日本人と同条件で試合出場ができるようになりました。
とはいえ、提携国枠を導入した当初は、「外国選手=チーム強化のための助っ人」という認識であり、ヨーロッパリーグからのスカウトはあっても、日本よりランキングの低いアジアの選手に関心をもつJリーグのクラブはありませんでした。小山さんはこうした前例のないケースを前に、「成功事例」をつくることに注力したといいます。

「アジア戦略を進めていく中でASEANのサッカー熱と経済成長ぶりを目の当たりにし、『ASEANのトップ選手はJリーグでも活躍できる』と確信しました。そこでJクラブとのコミュニケーションにおいても、単に戦略を説明するだけでなく、事業の可能性や現地の選手情報を提供したり、現地ツアーを組むなど、包括的なアプローチを実施し、グローバル展開後の世界を一緒に共有することを重視しました」



こうした取り組みの結果、「北海道とともに、世界へ」をスローガンに掲げる北海道コンサドーレ札幌が、2013年にASEAN第一号となるレコンビン選手(ベトナム)を獲得。その後も提携国枠導入などもあり、ASEANのスター選手が徐々にJリーグの舞台に登場しはじめます。そして、2017年のチャナティップ選手(タイ)の大活躍により、ASEAN選手の実力が証明されるやいなや、JリーグでのASEAN選手への注目が一気に高まりました。チャナティップ選手のJリーグでの活躍はタイでも大反響を呼び、今やタイでのJリーグの認知度は7割超、その割合はイタリアのセリエAリーグを凌ぐほどになっています。

ASEAN選手の活躍とともに、「ASEANへのJリーグ放送エリア拡大」も進みます。タイのSIAMSPORTは Jリーグと放映パートナーであり、Jリーグの試合をYouTubeやFacebookで無料生配信しています。その視聴回数は2020シーズンだけでも約8000万だったとのことからもタイでのJリーグ人気ぶりがうかがえます。また、海外への「SNSの発信強化」もつづけており、FacebookやTwitter、Instagram、YouTube、Weiboを含めたSNSの年間総リーチ(2020年)は、6.3億を記録しています。

このほかにも各国に特化したプロモーションの成果もあり、今や60以上の国と地域でJリーグは放映されており、海外放映権料も2012年から8年で約10倍に。「ASEANにおけるJリーグへの認知やサッカーへの関心も高まりつつあり、大きな収入源である放映権料も、まだまだ伸びしろがある」という小山さんのお話からも、ASEANの底知れない成長の可能性を容易に想像することができます。


こんなにある!ASEANでの成功事例と効果

特別セッションの後半では、小山さんから10を超えるASEANでの事業事例をご紹介いただきました。
ASEANへの事業展開によって、Jクラブやパートナー企業には具体的にどのような成果があったのでしょうか。

ひとつの事例として「ASEANスター選手獲得による事業効果」として、北海道コンサドーレ札幌とパートナー企業の赤城乳業の話があげられました。赤城乳業は、タイのサッカーファンに圧倒的人気を誇るチャナティップ選手を、アジアプロモーションパートナーとして自社製品「ガリガリ君」の広告塔に抜擢。タイでの商品認知度がアップしただけでなく、チャナティップ選手が活躍する北海道コンサドーレ札幌の知名度アップにもつながりました。ASEANのスター選手の活躍が、Jリーグのクラブチームやスポンサー双方に新たな価値提供をもたらした好例です。




次に小山さんは「既存パートナーとのアジア展開事例」をお話くださいました。
ガンバ大阪のパートナーであるパナソニックは、インドネシアの現地法人「パナソニック・ゴーベル インドネシア社」の特別協賛によるフレンドリーマッチを、ジャカルタで開催しました。25,000人ものサッカーファンがスタジアム観戦したほか、翌日にはファン交流会や子供たち向けのサッカークリニックも実施。Jクラブのアジア進出が、パートナー企業へ新たな価値還元につながる事例も充実してきています。

「アジアでのスクール事業展開」として注目すべきは、2021年9月にベトナムの都市ビンズンではじまる、川崎フロンターレによるJリーグ初のサッカースクール事業です。なぜビンズンかというと、スポンサーである東急グループがビンズンで都市開発事業を行なっているためです。東急グループは、都市開発における強力なソフトの一つとしてサッカーを重視しており、2013年から親善試合やサッカークリニックなどを継続開催していました。こうした取り組みがサッカースクール事業として結実しました。日本ならではの強みであるサッカーの育成ノウハウによって、アジアでの新たなビジネスチャンスが生まれています。

ところでASEAN諸国のサッカー界には、「各国のプロリーグやサッカー協会の多くが、国の皇太子や大臣、実業家といった政界・財界の実力者によって経営されている」という他国ではなかなか見られない特徴があります。FC東京は、タイ最大の財閥企業「CPグループ」の子会社であるバンコクユナイテッドとパートナー関係にあります。 FC東京のスポンサーであるニチバンは、FC東京とタイ最大の財閥とのネットワークを活かし、CPグループのトップとのコンタクトが実現。CPグループがタイに保有するコンビニへの自社商品導入に成功しました。このようなASEANサッカー界のネットワークを活用した海外進出の機会提供も、今後ますます増えてくるものと予想されます。


アジアとともに成長する日本へ

成功事例が華々しいJリーグですが、今回のコロナパンデミックの影響は少なくなかったと小山さんはいいます。一般的に、パートナー企業の事業が厳しくなると、真っ先に切られるか減額されるかのリスクの矢面にたつのがスポンサー契約です。しかし、最近では、こうしたリスクがアジア進出の後押しになっているというのです。

「パンデミックにより国内事業の価値提供だけでは厳しくなってきている昨今、新たな価値創造のために、アジアへの事業展開に興味をもつJクラブやスポンサーの数は、むしろ増加傾向にあります」



サッカーといえば、ベルギーやフランスといった世界トップ国々もある中、Jリーグではなぜアジアで選ばれているのでしょうか。小山さんは、日本サッカーが急成長したノウハウ以外にもヨーロッパにはない強みが日本にはあるといいます。

「Jリーグが掲げているのは、同じアジアの国としてサッカーを盛り上げていきたいということ。日本の1.3億人のマーケットのみならず、アジアの6.4億人を加えた約8億人のマーケットの成長のための戦略をつづけています」

日本国内のみを対象に価値創造するのではなく、同じアジアに位置するASEAN諸国とともに成長していく。Jリーグのアジア展開が躍進しつづけている背景には、「アジアと共にある日本」というグローバルなスコープがありました。