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2021-12-15
Huubapが考える目指したいマーケットと選ばれるための挑戦

開発拠点からマーケティング拠点を目指す-
Huubapが考える目指したいマーケットと選ばれるための挑戦
ASEAN諸国のマーケットとその成長の伸びしろは、世界的で注目されています。中でもシンガポールには多くの外資系企業のヘッドクオーターが集まっています。シンガポールに拠点をおく外資系企業は、なぜ数ある国からシンガポールを選び、どのようにASEAN諸国へマーケティングをしているのでしょうか。
Bigbeat LIVE ASEAN vol.03では、Huubap Pte. Ltd.の代表取締役社長 CEOの奥畑カズユキさんをお招きしてお話しをお伺いしました。
Huubap社は株式会社ヒューマンテクノロジーズ(H&T)のシンガポール現地法人として2015年に設立。もともと主力プロダクトであるクラウド勤怠管理アプリの「開発」を主な目的として活動してきましたが、ここ最近は、ASEAN諸国への「マーケティング」を強化して活動されているとのこと。開発拠点からマーケティング拠点への転換を果たしているHuubap社の最前線の取り組みを伺いました。
シンガポールに拠点を置いた4つの理由
半導体専門商社の技術部門、エニックス研究所の指紋認証・セキュリティ研究、そしてヒューマンテクノロージーズ(H&T)社での役員を経て、2015年にMBOをしてHuubap社を設立した奥畑カズユキさん。H&T社といえば、クラウド勤怠管理システムの「KING OF TIME」が日本のシェアNo.1を誇る企業。そのような技術を携えて、なぜ国の文化や勤怠への意識が異なるシンガポールに活動拠点をつくったのでしょうか。
その理由を奥畑さんは次の4点だったと語ります。
1.大手に買収されるリスク
自社のクラウド勤怠管理システムは日本国内シェアNo.1だが、指数関数的な伸びは期待できない状況。小さな世界に閉じこもっていては買収されるリスクがあった。
2.ボーダーレスな「クラウド」の競合リスク
クラウドは国境がないため、このままでは欧米やASEANのユニコーン企業らの競合に負ける可能性が出てきた。
3.国内での開発力確保の問題
日本の優秀な技術者はTVCMをしている勢いのあるIT企業やシリコンバレーなどへ行ってしまい、優秀な人材の確保が難しかった。
4.投資力とタイミング
資金力・投資力のあるタイミングで海外展開をしないとチャンスを逃すリスクがあった。
「『先細る国内マーケット』と『開発力不足』という課題を持って、何をするかはあまり決めずにシンガポールに向かいました」と奥畑さんは当時を振り返ります。

人材確保の困難をきっかけに、「フルリモート」の発想転換へ
シンガポール展開の主たる目的であった「開発力」のための人材確保ですが、蓋を開けてみると相当な苦労があったそうです。
「そもそもASEANの中でシンガポールを選んだのは、英語が使えること、銀行口座開設を含めてビジネス環境が整っていることが大きかったのですが、そこで見つけた優秀な人材は、現地の方ではなく外国人ばかりでした」
実はシンガポールは外国人のビザが出にくい国。「ビザを出すということは、出すに値する優秀な人材だろうみなされます。学歴・経歴・年齢に応じて賃金規定などもあり、現地の人の約3倍もの人件費を支払わないといけないことがわかってきました。」(奥畑さん)
そこで奥畑さんの出した結論は、「シンガポールで雇うのはやめよう。フルリモートにして、シンガポールの周辺国から雇おう」でした。
「アジアの国々からすると『シンガポールにはいい仕事がある』というイメージがあり、仕事募集をすると、周辺国から優秀な人材が募集してくることがわかってきました。だからと言ってビザや人件費の問題からシンガポールに来て働かせるわけにもいきません。そこで、コロナ禍の前から割り切って、フルリモートに切り替えました。」(奥畑さん)
「スリランカやマレーシア、フィリピンなどアジアの国の多くは通勤環境が悪く、往復数時間かけて毎日オフィスに行くのが当たり前。
それに比べるとフルリモートは非常に働きやすい環境だと喜ばれました。普通は1、2年で転職する人が多いのですが、2015年の設立以来、現在までに辞めた人は数える程しかいません。」(奥畑さん)
日本の3倍超! ASEANマーケットの魅力と伸びしろ
つづいて、開発力確保と並んでもう一つの課題の「新たなマーケットの獲得」について話を聞くと、「まずASEAN全体における労働人口に基づいて、自社サービスのポテンシャルを調べたました」と奥畑さんは言います。
「『KING OF TIME』はBtoB、HR向け製品です。そこで労働人口と中間所得層を調べ、その中の10%に販売と試算をしたところ、ASEANは660万IDと190億円という非常に魅力的なマーケットであることがわかりました。」(奥畑さん)
なお、日本の現在の「KING OF TIME」の課金IDは200万ということですから、ASEANの伸びしろを考慮すると国内の3倍以上のポテンシャルが優に見込めることとなります。

ASEANといっても国の数だけ文化があります。Huubap社ではその違いをどう捉え、ここ直近で進出を狙う国などはあるのでしょうか?
「シンガポールは、どちらかというと『ASEANの統括』という立場のグローバル企業のヘッドクオーターが多く、お客様の多くが外資系企業で、企業間の情報収集も活発です。一方、実際のID数の観点では、製造業の活発な『タイ』が圧倒的に多いことがわかってきました。」(奥畑さん)
ちなみに、Huubap社は日系企業を主軸にASEAN諸国を捉えていますが、それは「日系企業が集まるということは、その国が欧米や外資系企業にとっても同様に魅力的な場所であるということ。それならば日系企業の情報を軸にすれば、読みとして大きな相違はないだろう」という理由なのだそうです。
「概念」を共有する難しさと、発見した意外なニーズ
それでは、文化も働き方も異なる海外で、実際どのようにクラウド勤怠管理システム「KING OF TIME」を広げていこうと考えられているのでしょうか。
まず「勤怠管理という概念の理解の相違」に直面したと奥畑さんは言います。ASEANでは、勤怠管理を「出勤・退勤を記録するタイムレコーダー」のようなイメージしかなされていません。日本ではシフトや休暇が一括管理できますが、ASEANの多くでは別々のシステムになっています。そのため、そもそもH&T社の考える勤怠管理を共有するのに苦労しているのだそうです。
「振り返ってみると、日本国内で最初にクラウド勤怠管理の説明をした時も、同じように理解の相違のある状況でした。それと比べれば、ASEANに拠点をおく日系企業は『日本でのトップシェア』と認知されていることもあり、決済がおりやすい傾向にありますね。」(奥畑さん)
こうした対話を現地で繰り返すうちに、ASEANでは別の理由で勤怠管理のニーズがあることがわかってきました。
「東南アジアの人は雨を理由に平気で遅刻するなど、時間にルーズです。一方で、例えばシンガポールの周辺国は労働組合の力が強く、『こういう条件で働かせてくれ』『こういう手当をくれ』など、管理者にとって厄介な自己主張を受け入れなければならない状況があると言います。そうすると、ASEANでも日本とは違う理由から、エクセルでは計算できないような複雑な勤怠計算が必要になってきます。
このようなカスタマイズは『KING OF TIME』の機能でカバー可能です。各国・各社の文化や独自ルールに対応できるという強みが自社サービスの差別ポイントの一つであり、日本でやってきた勝ちパターンに共通するものがあることがわかってきました。」(奥畑さん)
インフルエンサーYouTuberとのコラボレーションも
ASEANでの自社サービスのニーズと手応えを感じはじめているHuubap社ですが、実際にはどのようなマーケティングの試みられているのでしょうか。
奥畑さんによると、日本で成功体験のあるウェブマーケティングでは、クロージングするのが難しかったそうです。東南アジアでは、InstagramやFacebookなどのソーシャルメディアが人気で、テレビ以上にYouTubeが普及しているとのこと。
そこで、Huubap社が始めたのが「現地インフルエンサー(YouTuber)とコラボレーションしたビデオ撮影」だそうです。「影響力のある人気YouTuberの方に、お客様へインタビューする、という動画を何本か撮影しています。動画に出演されているお客様の多くが飲食店なのですが、公開後に何日も店舗に行列ができたり、商品がすぐに完売になるなどの大きな反響がありました。我々への具体的な反響はこれからですが、色々と試しつづけていきたいですね。」(奥畑さん)

日系企業全体で、日本製品のアピールを
ここまでの話を踏まえて、Huubap社が近い将来になりたい姿を奥畑さんに訊ねました。その回答は「ASEANでのNo.1。ここ10年で1000億のプレイヤーになること」だそうです。「我々が目指しているのは勤怠から給与の管理までを、日本だけでなくアジア各国で提供することです。みんな夢を持って毎日夢を語りながら開発・販売をしています。」(奥畑さん)
最後に、ASEAN進出を検討されている方にメッセージをいただきました。
「細かいところに手が届く機能や技術は日本ならではのもの。そうした部分は間違いなく東南アジアにも受け入れられると思います。いろんな日系企業の競合他社が出てくるほど、『日本製品はいいね』と思ってもられるチャンスが広がるということでもあります。ぜひ積極的にASEANへ展開していっていただければと思います。」(奥畑さん)