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2022-4-25
日本のFinTech事情 -タイとの連携とその可能性-

日本の最新のFinTech事情 -タイとの連携とその可能性-
ここ近年、タイやASEANの経済成長が世界的にも注目を集めています。とりわけFinTechのスタートアップは目覚ましい成長を遂げており、その勢いは増すばかりです。
同様に、日本でもFinTech業界も成長をつづけています。日本では2015年に一般社団法人FinTech協会が設立されました。そこでは、国内での官民連携はもちろん、海外の政府や中央銀行などとの連携や各国のFinTech協会とのパートナーシップ締結など、FinTech業界の活性化をクロスボーダーで推進する取り組みが国をあげてなされています。
それでは、日本のFinTech業界はどのような状況にあるのでしょうか。一般社団法人Fintech協会で国際連携を統括しており、タイでのビジネスの経験もある鬼頭武嗣代表理事副会長から、タイやアジア諸国との連携の可能性の話を含めて話を伺いました。

【海外の大企業を含む450社が加盟する日本のFintech協会】
タイには「Thai Fintech Association」( https://thaifintech.wixsite.com/website )がありますが、それと同じように、日本でも同様のFinTech Hubがあります。日本では2014年10月から定期的に「Fintech Meetup」を開催し、国内外のスタートアップと金融機関の自由な意見交換をおこなってきました。そして2015年9月に「Fintech Association of Japan(สมาคมฟินเทคประเทศญี่ปุ่น、以下FAJ)」( https://fintechjapan.org/en/ )が正式に設立されました。
設立当初の加盟社数は31でしたが、2021年12月には450とその数を急速に増やしています。

*Fintech協会会員の450社のうち、158社が日本のFinTechのスタートアップ、292社が一部海外を含む金融機関をはじめとする大企業で構成されています。
FinTech関連では、決済、保険、キャピタルマーケット、融資、ブロックチェーンなど、幅広いセグメントのスタートアップ企業が会員となっています。タイのOmiseやUKのRevolutやWiseなども会員です。

一方、大企業の会員の構成は、銀行、証券、保険、地銀、クレジットカードなどの金融機関、それ以外には、テレコムや商社、不動産、メディア、さらにソフトウェアやITサービスなどとなっています。
【日本のFintech協会の4つの活動の柱】
Fintech協会では、主に次の4つの活動に取り組んでいます。
1.分科会
現在9つの分野の分科会を運営しています。各分科会では、会員向けの勉強会やミートアップ、法改正時のパブリックコメントの集約や政策提言などを行っています。
2.ガバメントリレーションズ
金融庁と良好な関係を築いており、イベントの共催や定期的な意見交換を行っています。また、金融庁だけでなく経済産業省をはじめとした中央省庁とも関係を構築しているほか、東京・大阪・福岡といった地方自治体とのパートナーシップの締結やコンソーシアムの構成を通じて、地域のFinTech業界の育成・発展にも力も注いでいます。
3.カンファレンスなどのイベント
「FINTECH JAPAN」というカンファレンスを毎年主催しています。そこでは日本のFintech企業や金融機関などの経営陣、金融庁やその他の有識者による最新の業界動向の共有や、パネルディスカッションだけでなく、海外からもゲストスピーカーを招聘することもあります。さらに、スタートアップにはピッチの場を設けるなど、幅広い参加者の方にFinTechの知見を深めていただく機会を提供しています。

4.国際連携
現在、世界の32の団体とパートナーシップを締結しています。タイの「Thai Fintech Association」ともパートナーシップ関係にあります。

*上図の濃い赤色の部分はパートナーシップを結んだ国をあらわしています。また、レギュレーターや中央銀行と継続的なコミュニケーションをつづけており、色々な国や地域とFinTech領域での国際連携のために活動をつづけています。

【日本のFintechトレンド】
日本の数ある産業の中でも金融業界は比較的国際化が進んでおり、Fintechのトレンドも概ねグローバルの動向を反映していると思います。例えばブロックチェーンのような技術やそれを活用したDeFi(Decentralized Finance)は国境の制約もなく次々と日本に入ってきていますし、金融庁や日銀なども国際的な対話を継続しているため、Regulatory SandboxやCBDC(Central Bank Digital Currency)のような新たな規制・制度の枠組みについても導入・検討が進んでいます。
この2年間でコロナという世界・人類共通の課題を共有したため、日本でもSustainabilityやResilienceといった共通した価値観の変化も生じています。
一方で、国全体のデジタル化や大きな産業構造の変革の遅れは依然大きく、FinTechソリューションの本格的な社会実装・普及という観点ではまだまだ道半ばです。
こうした状況を変えるために、例えば決済分野では5年前には20%を切る水準だったキャッシュレス決済比率を2025年までに40%まで引き上げることを政府目標としていたり、銀行法の改正で金融機関にはAPI公開の努力義務が課されたりと、金融分野での政府主導のイニシアチブが以前より進行しています。
また昨年11月には「金融サービス仲介業」(Financial Service Intermediary Business)という新たなライセンスの枠組みも施行され、これによってSuper Appなどの非金融企業がAPI連携によって自社サービスに金融サービスを組み込んで提供することが容易になりました。
米国や欧州では既に進行している金融産業のUnbundlingからRebundlingに向かう流れが日本で始まったとも言え、BaaS(Banking as a Service)や他のFintech SaaSを提供するスタートアップや金融機関も増えてきています。

この2年間のコロナ禍によるライフスタイルの変化は、こうしたデジタル化・キャッシュレス化、業界構造の変化を後押しする形となりましたが、一方でマネーロンダリングやクレジットカードの不正利用などの金融犯罪の増加や、中小企業の資金繰りの悪化といった課題ももたらしています。
そして、こうした課題を解決するために、eKYCやAnti-Money Laundering、Fraud DetectionといったサイバーセキュリティやRegTech/SupTech関連の領域、国の基幹産業である製造業のサプライチェーンの強靭化に資するSupply Chain FinanceやSME向けのオルタナティブ・ファイナンスといった領域にも改めて注目が集まっていると思います。
金融業界から離れて、デジタルというより大きな観点では、昨年9月にデジタル庁が設置され、業界横断の構造改革も進行しています。そのうちの一つのトピックとして、Data Exchangeの創設というものがありますが、Exchangeの名の通り金融のアナロジーを用いてデザインできる部分も多くありますので、私も有識者会議の一員として検討に関わらせてもらっています。
【タイとの連携と、今後の展望】
Thai Fintech Associationとは2017年頃からコミュニケーションを始めており、2018年8月にはMOU(Memorandum of Understanding)の締結をしています。KX(อาคารเคเอ็กซ์)にあるオフィスも何度か訪問しました。
さらに、2019年にはアジアパシフィック地域の9カ国のFintech協会が集い、APAC Fintech Networkという多国間連携の枠組みを発足させ、 APAC全体を盛り上げるべく協業の合意がなされました。ここにFAJとTFTAも加入しています。
コロナパンデミックの2020年以降は、例えば昨年はこのAPAC Fintech Networkに参画しているタイ・日本・シンガポール・香港・フィリピンのFintech協会の代表がオンライン上でパネルディスカッションを行うなど、デジタルに場所を変えて活動をつづけています。

Fintech協会では、今後、コロナパンデミックによる渡航制限が緩和されれば、タイのエコシステムと更に踏み込んだコラボレーションをしていきたいと考えており、例えば次のような連携があるのではと考えています。
1.タイ-日本間のクロスボーダーでの金融取引やデータ流通に係る規制やインフラのinteroperabilityの構築を目指して、regulatory sandboxやdigital sandbox/API exchangeの連携に必要なレギュレーター・政府間の対話の促進をおこなう。
2.民間レベルでは、クロスボーダー決済などの金融取引を推進するようなビジネスマッチングをする。
3.例えば個別の分野では、タイと日本は製造業を中心としたサプライチェーンで密接に繋がっていることから、Supply Chain FinanceやTrade Finance関連のソリューションを共同で実装することで、タイと日本の中小企業支援を推進する。
Fintech協会は、ここに挙げた意外にも色々な可能性があるととらえています。例えば、少子高齢化といった共通する課題への対応なども挙げられるかもしれません。今後も継続的に、タイのFinTech業界やテクノロジー業界の方々と、タイと日本とのコラボレーションのあり方について議論を重ね、両国のエコシステムの連携・発展のために協働していきたいと考えています。