2018.08.15

Case Study

大手SIerの文化と組織を変える新しいチャレンジ -CTCの今-

大手SIerの文化と組織を変える新しいチャレンジ -CTCの今-

大企業向け業務系基幹システムや大規模ネットワークインフラ構築で豊富な実績を持つ日本国内有数の大手SIerである伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)。

1972年創立という長い歴史を持ち、CTCグループ全体で8,500人以上の社員を抱えるSIerのマーケティングはどう行われているのでしょうか。

同社 執行役員クラウド・セキュリティ事業推進本部  本部長  藤岡 良樹氏と、ITサービスグループ 企画統括部 部長代行 マーケティング課 課長 隅谷 崇氏に、ビッグビート 代表 濱口 豊がお話を伺いました。

<SIerにはマーケティングは必要なかった>

濱口:藤岡さんもロック大好きということで、今回は私の大好きなこちらのロックバーにお越しいただきました。

藤岡さんのご経歴を簡単にご紹介いただけますか。

藤岡氏:音楽好きが高じて、1985年に新卒でPioneerに入社して、オーディオの設計を長く担当していました。その中で担当したミニコンポが爆発的に売れて、社長賞をもらったこともありました。設計も自分でできたし、企画にも「こんな機能を作れるよ」と発案しながら作れたので、楽しかったですね。

その後、工場から本社に移って、映像機器のプロダクトマーケティングを担当しました。

当時はまだITという言葉すらない時代でしたが、光ディスクを使ったアーカイブの仕組みを作ったりしていたので、そのころからコンピュータは知っていました。本格的にコンピュータの世界に入ったのは、Pioneerを辞めてからです。

IT部品の商社や外資系IT企業であるDECを経て、1998年にCTCに入社し、今年でちょうど20年目になります。

濱口:CTCに入ってからは、どんなお仕事をされてきたのですか?

藤岡氏:当時はUNIXが全盛期で、Sun MicrosystemsのSolarisの販売推進部隊に入りました。

CTCは同社の販売代理店として世界で1位2位を争う立場で、私は営業技術として、Sunの窓口や技術サポート、社内の販売展開をしばらく担当していました。2004年を過ぎてから、少しずつUNIXからLINUXへハードウェアのトランジションが起きてきます。そのころからは、弊社が取り扱っているたくさんの製品のうちの7〜8割について、メーカーとの契約の窓口や技術サポート、販売推進の責任者をしばらく務めました。

その後、VMwareが出てきて仮想化統合の動きが始まり、さらにAmazonがクラウドサービスの提供を始めてから2年後の2008年に、弊社も自社開発のクラウドビジネスを自社データセンターの中で始めました。それが弊社のクラウドサービス「TechnoCUVIC」の始まりで、今はCUVICシリーズのラインナップも拡充して、そこの責任者をしています。

濱口:御社の、マーケティングへの取り組みはこれまでいかがでしたでしょうか。

藤岡氏: 実はあまり自社としてのマーケティングの必要を感じていませんでした。弊社はSIを本業にしているので、マスに訴えかける必要性がなかったのです。また、製品販売を中心にしていましたが、製品のマーケティングはメーカーがやっていました。たまに新聞や雑誌に広告を出したり、セミナーは個別の担当者ごとにやったりはしていましたが、“マーケティング”という言葉は社内であまり使いません。

マーケティングって、人によって色々な理解をしているので、難しいですよね。

<CTCにマーケティングが必要になった理由>

濱口:今回、「Bigbeat LIVE」のイベントに来て欲しいお客様のペルソナを考えていたときに、真っ先に思い浮かんだのが、少し前の隅谷さんだったんです。藤岡さんから「クラウド事業では、マーケティングで武装された企業と世界で戦わなければならない。うちもマーケティングをやるぞ」と言われて、隅谷さんがマーケティングに取り組むようになった、という構図を勝手に想像していたのですが、実際のところはどうだったんでしょう?

藤岡氏:半分くらいそんな感じです(笑)

私はマーケティングの勉強を一切したことがないのですが、クラウドをやるようになって、必然的にマーケティングコミュニケーションをもっとやらなければならなくなったんですね。なぜかというと、IT関係の方でCTCを知らない方は、あまりいないと思うのですが、CTCがクラウドをやっているということは、知らない方がまだ多いのです。これは社内的な事情ですが、私どもは大型案件を提案して受注するビジネスが主流なので、月単位で少額の売り上げとなるクラウドビジネスは営業的にあまり面白みがない。

頭では“これからクラウドの時代になるし、リカーリングビジネスもやっていかないといけない”とわかってはいるのですが、営業としてはどうしても取り組みづらいのです。

「少額のサービスだからこそ、営業が足で稼ぐのではなく、まず引き合いをもらって、『こんなお客様から問い合わせが来ているよ』と情報を渡せるようにしよう」というところから。新しいサービスを知ってもらうために始めたのがきっかけです。

濱口:そのサービスを立ち上げた隅谷さんとしては、どんな思いだったんですか?

隅谷氏:私自身、営業部門での活動も長かったので、以前は大型案件の提案や受注を担当していました。

2008年の自社開発のクラウドビジネスに始まり、“会社として新しいビジネスを作らねば!いろいろやってみよう!”という動きが活発になり、そんな中で弊社の中では非常に少額なクラウドサービスを立ち上げました。当然すぐに売れるかわからないし、売上も少額ということで前線の営業は取り組みづらい。それならお客様の方に気づいてもらって、お客様から「ちょうだい」と言ってもらわなければならないということで、まずはWebを使ったプロモーションから始めました。当時は、営業のリソースを使うことなく売り上げるやり方ということで、“非提案型多量販売”と言っていましたね。この辺りからマーケティングのような活動になっていったと思います。

藤岡氏:彼は自分の担当するサービスなので、売れないと困ったでしょうけど(笑)、私は実験場と割り切っていて、マーケティングでどこまでいけるのか確認してもらいたかったんです。とはいえ、クラウド全体のアピールはしたかったので、2008年から「CTC仮想化セミナー」というタイトルで、クラウドに特化したセミナーを始めました。私はアメリカでメガベンダーのショーアップされたイベントをたくさん見ていたので、2013年の「cloudageフォーラム」からは見せ方にもこだわって、一貫したストーリーのあるイベントに仕立てています。オープニングはLed Zeppelinがいい!とか(笑)。

濱口:実際にイベントを始めてみて、反響はどうでしたか?

藤岡氏:何より社員から好評なんですよ。「うちって、こんなすごいことができる会社なんだとわかりました」と。そこを狙っていたわけではないのですが、そうした声はよく耳にしますね。2016年からは、クラウドだけでなく製造系サービスのイベント「CTC 製造ソリューションフォーラム」も合体させて、「CTC Forum」として年に一度の大きなフォーラムを開催しています。今では営業の意識も変わってきていて、“今、この会社にはサーバしか売っていないけれど、アプリケーション開発もできますとアピールする場として活用しよう”といった形で、

営業自らどんどんお客様を招待してくれるようになりました。来場者のお客様からは「CTCって、そんなこともやっているんだったら、もっと相談させてよ」といった反応をいただけるので、新たなリードを作る場として、非常に役立っているのではないかと思いますね。

濱口:コンテンツ作りにはご苦労されていませんか?

隅谷氏:前線の営業やお客様からの反応が良くなってきていることで、以前よりも全社からの協力度合いが上がって、社員みんなから案を出していただいているので、プラスな方向で動いていると思いますね。今年の訴求ポイントをみんなで考えて、それなら何を出そうかと社内からいろいろ出てきて、「それならこのお客様に事例発表を頼んでみよう」と。今年の「CTC Forum」の準備も進んできています。

藤岡や社内のフロントの営業と話をしていると、“お客様に新しいテクノロジーの紹介はしているけれど、なかなか使いこなせていない。いろんなトライはされているけれど、実際のビジネスにつながっていない”といった課題が見えてきました。そこで、今年は自戒も込めて「デジタルテクノロジーを使いこなす」というテーマで11月2日に開催します。「インフラだけでなく、それ以外のところもCTCに頼んでいいんだね」と言ってもらえるといいですね。

藤岡氏:今まで私たちのお客様は情報システム部門だったのですが、一昨年くらいからそれを少しずつ変えなきゃいけないという話をしているので、今年はもう少しお客様のLOB(事業部門)の方たちにも来ていただいて、CTCという会社について、もっと知っていただきたいという思いもあります。

濱口:11月、CTC Forumが楽しみです。今後、強化されていきたい取り組みについても教えていただけますか。

隅谷氏:「ビジネスonIT」というオウンドメディアを立ち上げて約3年経ち、Webでの片方向の発信力は高まっていると思うので、今後は双方向でのやり取りを活発にしていきたいですね。基幹システムに特化したクラウド基盤である「CUVICmc2」のパートナー会を始めとして、クラウドやセキュリティに関するリアルなコミュニティを今期からいくつか運営していくことを考えています。そこではWebだけでなく、アプリも駆使して、リアルとバーチャルを連動させて継続的・連続的なコミュニティを実現することを狙っていきたいと思っています。

濱口:マーケティングへの取り組みがどんどん加速していますね。

マーケティングって、近江商人の「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」を具体化するものだと思います。その近江商人の流れを汲む伊藤忠グループの御社では、マーケティングという言葉は使わないけど、DNAには組み込まれているのではないでしょうか。

藤岡氏:そうかもしれませんね(笑)

【伊藤忠テクノソリューションズ株式会社について】

日本で有数の大手SIerとして大企業向け業務基幹システムや大規模ネットワークインフラ構築で豊富な実績を持つ。

ITの黎明期からキャリアを積み重ね、あらゆる分野・業種に精通。仮想化ホスティングサービス「TechnoCUVIC」は、CTC初のクラウドビジネスとして2008年にスタート。現在100社以上に導入されている。