ウイングアーク1stがマーケティングを変革する理由
日本で帳票市場、データ活用・BI市場を牽引するウイングアーク1st株式会社
同社はデータの価値を最大化することで、組織と企業にイノベーションを起こすことを標榜しています。
技術と営業の強い会社と評されていた同社が、3本目の柱としてマーケティングを立てることに決めたと言います。
同社のマーケティング部門を率いるマーケティング部 部長の深尾 茂氏に、
日本のマーケティングの現況と同社の取り組みについて、ビッグビート 代表 濱口豊がお話を伺いました。
<これから求められるのはデザインドリブンなマーケティング>
濱口:2018年8月1日に開催する「Bigbeat LIVE」に御社の野島さんにご登壇いただくということで、誠にありがとうございます。
深尾氏:こういうイベントではよく経営陣と現場の思いのギャップが起こることも多いですが、
去年のBigbeat LIVE開催から1年経って、Bigbeatの社内はいかがですか?
濱口:少しずつ近づいていると思っています……。
深尾氏:もしかしたら最初はトップマネジメントの考えている一部しか現場は理解できないかも知れないけれども、
一緒にイベント作りをしていくことで、その思いも徐々に浸透していくものですよね。弊社もそうなのです 。
濱口:まさにその通りですね。Bigbeat LIVEの開催を決めたきっかけは、2015年に創業20周年を迎えたことでした。
広告会社としてお客様の経営のお手伝いをさせていただくことももちろん大切なのですが、
さらに世の中の役に立てることに取り組みたいと思ったのです。
深尾氏:私自身も働き始めてから随分経ったので、同じ気持ちです。
ウイングアーク1stに入る前はずっと外資系企業でマーケティングに携わってきて、
そのまま外資にいる方が私のマインドにあっていたのですが、子供の将来を考えると何か社会に貢献したいと考えるようになりました。
自分ができることはマーケティングの領域ですから、何かこれを日本の事業会社に活かせないかと考えたのです。
同時期に、ウイングアーク1stから「マーケティング部の立て直しをして欲しい」と依頼があって、5年前にジョインしました。
濱口:御社のことは個人的に昔から存じ上げているのですが、2年ほど前から驚くほど見え方が変わってきていると感じます。
この5年間でどのような取り組みを進められてきたのですか?
深尾氏:私が入社した当初は、日本企業でありがちな社内ポジションで、
マーケティング部 という名前だけどマーケティングはやっていないという状況でした。
そこでまずは本来あるべきマーケティングのフレームワークを入れていくことから始めました。
当時はマーケティングリードが年間数千件ほどしかなくて、投資に対してとても少ないと思ったのです。
第一歩はハウスリストをいかに増やすか、ということでしたね。
その後3年ほどで8倍くらいまでマーケティングリードをジェネレートできるようになったので、
次はクリエイティビティを発揮するデザインドリブンなマーケティングを考え始めました。それが3年前くらいです。
濱口:なるほど。ちなみにデザインという言葉は、どう捉えていますか?
深尾氏:デザインというのは、見た目のビジュアルだけでなく、顧客体験も含めたものと捉えています。
その頃ちょうどクラウドサービスを立ち上げ、ソフトウェアメーカーからの転換の時期でした。
サービスの時代になるとBtoCのマーケティング要素がBtoBでも主体的になってくるだろうということが見えていましたので、
Bto Cの要素を積極的に輸入しようということを考えたのです。
例えばAppleやGoogleのプロダクトは、説明書要らずですよね。購買プロセスの中でも説明が非常にシンプルです。
濱口:デザインが機能を物語っているということですね。
深尾氏:はい。野島はアートディレクションをずっと仕事としてやってきていて、その要素を新しいチームに輸入してくれています。
やはりチーミング、チームづくりは大事ですね。どうしても長く一緒に仕事していくと同質化していくので、
ビジョンに向かうために必要な刺激を与えられる人材を定期的に獲得しなければいけません。
場合によっては摩擦が起こるかもしれませんが、それが新しい力を生み出し、クリエイティビティへと繋がっていく。
今のマーケティングには、特に大切なことだと思いますね
<“マーケティングの会社”と言われるために>
濱口:御社内でマーケティングの立ち位置は変わりましたか?
深尾氏:そうですね。「ウイングアーク1stは技術の会社、営業の会社と言われてきましたが、マーケティングの会社と言われたい」
というのが今のトップマネジメントの強い意思としてあります。
これからはマーケティングが会社をリードしないと成長できないと、マネジメントチームが判断しています。
濱口:この数年でBtoBマーケティングは変わってきたとはいえ、
日本の中堅企業ではまだまだというところも多いのではないかと思うのですが、どう見ていらっしゃいますか?
深尾氏:日本企業の場合は、BtoBとBtoCでは明らかに違いますね。
本来であれば、BtoB こそブランディングが大事だと思うので、我々もそこに力を入れてやっていきます。
我々のようなリカーリングビジネスを事業としている企業で大切なのは、サービスを使い続けてもらうことであり、
使い続けてもらえるデマンドをどう作り出すかということ。
お客様が使い続けたくなる理由を、我々が常に緊張感を持ってサービスとして提供していく必要があるので、
BtoBとBtoCの境界線が見えなくなっているというのが実態と思っています。
濱口:本当にそうですよね。BtoBの場合、お客様は静かに離れてそのまま戻ってこなくなってしまいますから。
深尾氏:そうなんです。だから我々のマーケティングのあり方も、いわゆるモノ売りではなくコト売りというのは当然のことながら、
お客様と共創するコミュニティ活動やゲーミフィケーションを取り入れたコンテストの開催といったものに
マーケティングの活動自体がシフトしていくだろうと思っています。
濱口:御社はユーザーグループのやり方を変えている真っ只中だと伺いました。
深尾氏:私がジョインしたタイミングで、ウイングアーク1st主体のユーザーグループを作りました。
当時、所属会員が数千名ほどにまで増えたのですが、会員のエンゲージメントレベルが、
リスニングするだけの人たちと積極的に参加する人たちに分かれてしまったのです。
そこでエンゲージメントで自走するようなコミュニティづくりをしていきたいということで、今の形に変えることになりました。
濱口:スムーズに移行できましたか?
深尾氏:もちろんです。セールスのトップがそう判断して、セールスチームのもとでコミュニティを運営していますから。
フレームワークは、お互い意見を出し合いながら作っている最中です。
濱口:会社の業績が順調に伸びているにもかかわらず、なぜそんなにドラスティックに変えることができるのですか?
深尾氏:往々にしてマーケティングとセールスは関係が難しいのですが、
ウイングアーク1stにジョインしたときにセールスチームにヒアリングをしたところ、
マーケティング組織に対する信頼がとても低かったんですね。
そこで、まずは社内のエンゲージメントを強めることと、プレゼンスを上げることに注力したのです。
何よりも重要なのは、人と人の信頼関係ですから、セールスチームと私との信頼関係を作ることからスタートしました。
おかげで今ではマーケティングとセールスがとても良好な関係にあります。
濱口:それは素晴らしいですね。
深尾氏:トップマネジメントもマーケティングを重視していて、技術陣であっても、セールスであっても、
マーケティングの素養が必要だということを経営レベルで理解しているのです。
マーケティングがとても重要な経営のドライバーになるということを。
濱口:技術陣の方もそうなんですか?
深尾氏:はい。そこはCTOの力が大きいです。我々の開発の強みは作るだけじゃありません。
作ったものが実際どう使われているかヒアリングに行って、それをまた製品に反映するというサイクルを、CTOが自ら常にやっています。
そしてCTOが講演もして、自ら製品やサービスの良さを伝えるという取り組みをしているので、
ミドルマネジメントから現場へと徐々に浸透しているんですよ。
濱口:全社的にマーケティングを活かしてやっていくというのは、経営の理想的な姿。でもなかなかできないことですよね。素晴らしいです。
<社内のマーケティングの見方を変えた オウンドメディア>
濱口:今回、御社のオウンドメディア「データのじかん」編集長の野島さんにご登壇いただくということで、
「データのじかん」を始めたきっかけなど教えていただけますでしょうか。
深尾氏:2年前トップマネジメントから「新たな認知活動を展開してほしい」と言われて、
1ヶ月考えて出した答えがオウンドメディアの立ち上げだったんです。
それで野島ともうひとりのメンバーと準備をして、昨年4月に創刊しました。
「1年間で数万PVやります」と執行役員会議で話したのですが、実際に野島と「10万PVはやるよ」と決めていました。
今の目標はコーポレートサイトと合わせて100万PVです。
(オウンドメディア「データのじかん」https://data.wingarc.com/)
濱口:オウンドメディアをやってみたいという会社は多いですが、なかなか軌道に乗せるのは難しいですよね。
深尾氏:そうですね。最初の0から1にするところは徹底的に1年間フォローしました。
それで立ち上がったのを見届けたので、これから1から10にしていくためにチーム制にして、
スケールしながら仕組みで回せるようギアを変えています。
進める上で大切なのは、プロデューサー的な人たちが、どれだけ長期的な視点を持って、経営も現場も説得していけるかなんですね。
実は、毎年行っている社員総会で、今年初めて野島が年間の社員表彰の最高位であるゴールデングローブ賞を受賞しました。
マーケティング部門初の快挙です。各部門からの後押しもあっての受賞なので、
社内でマーケティングに対する理解が進んでいることがわかり、とても嬉しかったですね。
濱口:それはすごい。そんな野島さんに、マーケティングの実践者としてご登壇いただくのが楽しみです。
最後に「Bigbeat LIVE」の開催に向けて、一言いただけますでしょうか。
深尾氏:おそらく自社だけのことを考えていたらできるチャレンジではないと思います。
日本のマーケティングを元気にしたいという思いは多くの人に伝わるのではないでしょうか。
濱口:まさに、Bigbeatにとって大きなチャレンジです。ありがとうございました。
【ウイングアーク1st株式会社について】
データの価値を最大化することで組織と企業にイノベーションを起こすと標榜し、
ソフトウェアとサービスを通じて、企業の情報活用を支援。
お客様の期待を超える製品やサービスを提供していくことを目指し、
常にお客様の視点に立ち、お客様の声に耳を傾け、現場の課題解決に向けた提案を行っている。