kintoneとは
サイボウズの主力商品の1つkintoneは、
「誰でも簡単に業務システムを開発できるクラウドサービス」というもの(詳しくはこちら)
kintoneは日本国内のみならず、NASA(アメリカ航空宇宙局)やLyftなど、
世界中の企業や団体で使われています。
2019年9月現在、グローバルで13,000社が導入しており、
さまざまなチームのさまざまな業務課題の解決に貢献しています。
kintoneの主な機能は3つ。
これらの機能を組み合わせて、プログラミングの知識がない人でも簡単に業務システムをつくれます。
散在するスプレッドシートや、サイン待ちの決裁書類の山、膨大で煩雑なメールから解放されるのです。
日系企業の海外拠点のあるある
たとえば、スプレッドシート。
名簿、売上管理、顧客管理、在庫管理といったデータベースや、
経費申請、進行管理表など、さまざまな用途に使われています。
これをチームで共有すると、どこに最新版があるのか分からなくなったり、更新の競合がおこったり、
計算式がうっかり上書きされていたりといったトラブルが起こってしまいがちです。
皆さんにも、ご経験があると思います。
紙の書類も大きな課題です。東南アジアの多くの国では、日本よりも紙が多い。
駐在員の方は、毎日、何十枚もの書類にサインをしています。
書類にサインをするためだけに外出先から帰社するのは、
交通事情の良くない国では、大変な苦痛です。
しかし、サインをしなければ業務が滞ってしまいます。
また、東南アジアはモバイル社会です。
職場でもチャットが乱立し、そのチャットを通じてビジネスが進んでいきます。
しかし、グループチャットに日本人駐在員が入っていなく、
問題が大きくなってから相談されるということも、しばしば耳にします。
業務の見える化ができていなく、トラブルの芽を早期に摘むことが難しいのです。
このような課題を、業務システムを使って解決できれば、業務効率は上がります。
しかし、ここでもう1つの海外拠点ならではの課題が持ち上がります。
日本の情報システム部門に相談しても、他のプロジェクトとの兼ね合いで、
対応してもらえるのが1年先など、なかなか改善が進まないというのもよくある話です。
そこで、データベース、ワークフロー、コミュニケーション機能を持ったkintoneを使って、
自分たちで業務システムをつくれたら素晴らしいですよね。
この「自分たちで」というのがポイントです。
そもそも、全社システムがあっても、スプレッドシートの利用がなくならないのは、
現場の人が「自分たちで」「自分たちの使いやすいように」カスタマイズできるからです。
SFAを導入していても、営業チーム単位で売上計画や進捗管理のスプレッドシートが存在したりします。
誰でも、自分たちの使いやすい道具が欲しいものなのです。
kintoneは、スプレッドシートを使えるスキルがあれば、
自分たち好みの業務システムを手に入れることができるツールなのです。
酒本さんは、このようなkintoneに惚れこみ、
「世界中の人たちに使ってもらいたい、世界中の人たちの『困った』を解決したい」と、
日々、各国を飛び回っています。
酒本さんの原点
学生時代の酒本さんは、家電量販店で、ある商品を販売するアルバイトをしていたそうです。
その経験を通して、お客様に商品の良さを理解していただき、買っていただくことの面白さを知りました。
しかし、あるとき、競合の商品について勉強していた酒本さんは、競合商品の方が、
自分の売っている商品より多くの点で優れていることに気がつきました。
それ以来、その商品を売ることに違和感を感じるようになったそうです。
自分が心の底からお勧めしたい商品を売りたい。
酒本さんは、就職活動をするにあたって営業職を志望し、企業研究をはじめます。
条件のひとつは、自分自身が夢中になれる商品があること。
その中で、酒本さんはサイボウズに出会います。
もともと情報共有という概念に興味を持っていた酒本さんは、
企業理念とツールの提供価値に強く共感し、サイボウズに入社します。
酒本さんの原点は、商品への愛でした。
「ホワイト企業でブラックに働いていました」と笑う酒本さんのバイタリティの源は、
愛する商品を世の中に広めたいという強い思いだったのです。
海外担当への転身
新卒でサイボウズに入社した酒本さんは、パートナー営業として大手IT商社の担当になりました。
ここで酒本さんは、間接販売の面白さを知ります。
間接販売は、仲間として動いてくれる社外のパートナーと、いかに良い関係をつくるかが重要です。
このチームビルディング、チームワークが上手くいけば、
少人数の営業部門でも大きな成果を上げることができると実感しました。
入社以来、一貫して大手IT商社の担当だった酒本さんは、上司に異動を打診され、希望を聞かれます。
しかし、大手IT商社担当よりもエキサイティングなポジションが思いつかず、悩みます。
そんなとき、ふと、海外事業が頭に浮かびました。
サイボウズの海外事業は、主に3つのテリトリーに分かれます。
アメリカと中国には現地法人を設立しており、直接販売をおこなっています。
それ以外の地域には拠点を置かず、日本から出張ベースで、代理店を通じた間接販売で対応しています。
酒本さんは、パートナー営業の可能性を、海外事業で試してみたくなりました。
自分の大好きな商品を、日本だけでなく、世界中の人たちに知ってもらい、使ってもらう。
そして世界中の「困った」を解決する。これほどエキサイティングなことはないと思ったそうです。
主要な市場は東南アジアですが、オセアニアを含めたAPAC(アジア太平洋)全般を担当。
さらに、酒本さんは新たにインドを開拓して、ヨーロッパからの引き合いに対応し、
「アフリカから問い合わせがあったら、僕が行くんでしょうね」
と日本、米国、中国以外の全部という広大な守備範囲。
これを、配属時は、専任である酒本さんと他部署と兼任の営業員1名、アシスタント1名で受け持っていました。
パートナーファースト
では、前任者から引き継いだ酒本さんは、どのように海外市場を開拓しているのでしょうか。
サイボウズの海外戦略はどのような方針なのかお聞きしたところ、「戦略はありません」とのお答え。
「正確には、その国のパートナーさん次第ということです。
サイボウズの海外戦略はこうだから、これに従ってくださいというものは無いんです。
だから、国によってやることが違います。あえて海外戦略を定義するなら、パートナーファーストです」
たとえば、酒本さんは日系企業を中心にアプローチしていますが、ある国のパートナーから、このようなことを言われました。
「なぜ海外に来てまで、日系企業ばかりなのですか? ローカルの企業にも営業をかけましょうよ」と。
酒本さんは、二つ返事で「やりましょう」と、
現地のイベントに出展するなどして、パートナーと一緒にローカル企業を開拓しはじめました。
また、あるパートナーと食事をしているときのこと。
「僕は学校でマーケティングを勉強していたんです。本当は営業じゃなくて、
マーケティングをやりたかったんですよね……」と打ち明けられました。
酒本さんは、「それならサイボウズが予算を組むので、デジタルマーケティングをやってみませんか?」とその場で提案しました。
パートナーがやりたいことを、徹底的に支援する。
それがパートナーのモチベーションを高め、信頼関係を強化していきます。
それを酒本さんは「ハートに火をつける」と表現します。
ハートに火をつける
酒本さんが商品に惚れこんでいるのと同じように、まずは、パートナーにもkintoneの良さを確信してもらうこと。
そうすることで、パートナーみずから、kintoneを広めようとしてくれるようになります。
たとえば、SNSの運用。なかなか手間がかかるし、一度始めたら容易にやめることができません。
炎上などのリスクも考えて、手を付けかねているマーケティングご担当者も多いと思います。
実は、kintoneの各国のFacebookページは、酒本さんからお願いしたわけではなく、
各国のパートナーが自主的につくって運用してくれているのだそうです。
また、ある国では、国家公務員の方が副業でサイボウズのパートナーになっています。
その方は、自国の大学生のITリテラシーを向上させるためには、
プログラミングの一歩手前の考え方を身に着けられるkintoneが最適だと考えました。
そして、国立大学への導入を提案し、大学生のスキル向上に貢献しています。
その想いは、お客様にも伝わります。
ある日系企業の導入担当の方がkintoneのファンになり、その企業の他国の拠点へ横展開してくださり、
ついには日本の本社にも逆輸入のかたちで導入されたというケースもあったそうです。
パートナーの心に着火して、自走し始めたら薪をくべ、風を送り、さらに火を大きく育てていく。
当たり前といえば当たり前かもしれませんが、それを徹底的にやり続け、やり抜くのはなかなか容易なことではありません。
しかも、相手は文化も商習慣もさまざまな人たちです。
ここに、ひとつ、大きなポイントがありました。
どの企業と組むかではなく、誰と組むか
パートナーシップを結ぶ際には、組織としての会社ではなく、
担当者個人の見極めが大切だということです。
誰が商品に共感してくれるか。誰の心に着火すれば良いか。
人間対人間の関係を属人的として否定する向きもありますが、
結局のところ、組織を動かすのも個人の想い、その人の熱意の大きさによるものなのです。
どこと組むかではなく、誰と組むか。
これは、アジアではとくに大切だと酒本さんはいいます。
そして、そのパートナー個人の成功を、全力で支援する。
「パートナーサクセス」の徹底こそが、アジア市場開拓のひとつの解のようです。