大躍進するインドのITサービス企業
イギリスに拠点をもつブランドコンサルティング会社Brand Finance社が「IT Services 25 2021」の中で、グローバル展開をしているITサービス企業のトップ25を発表していました。その中には日本のITサービス企業も含まれていましたので少しご紹介します。
ちなみに、この調査は2021年の1月に発表されたもので、世界29か国の2,500社を対象に50,000件以上の回答を得ているものだそうで、今回で5年目の調査となるようです。
世界的なCOVID-19の大流行は、ITサービス会社の状況を一変させ、IT業界全体の変化を加速させました。そのなかでもサービスプロバイダーとしての運営からコンサルティングやDXのパートナーとしての変化に素早く対応ができた企業は、COVID-19の状況下でも堅実な成長をすることができているようです。このようなことからも、昨年、ヨーロッパであったようなITサービス企業の大型案件の獲得は、今後も続くとみられています。
今回の調査結果の主なトピックとしては以下の6つです。
・ Accenture(米)が3年連続で、世界で最も価値あるITサービス企業としてのポジションを獲得し、ブランド価値は過去最高の260億米ドル、ブランド力指数(BSI)では100点満点中85.6点のトップスコアを獲得。
・ 3位のTCS(印)がIBM(米)との差を縮め、TCSは11%のブランド価値を上昇させ、逆にIBMは24%の減少。
・ Infosys(印)がトップ10の中で最も急成長し、世界のITサービス企業のビッグ4にランクイン、ブランド価値は19%上昇。
・ Tech Mahindra(印)のブランド価値が11%増加の23億米ドルに成長したことで、ブランドランキング17位から15位に上昇。
・ LTI(印)は成長率が最も高かった企業で、ブランド価値が37%上昇。
・ DXC(米)はブランド価値の39%を減少、ランキングでは昨年の7位から12位へ大きくランクダウン。AtoS(仏)との合併への影響が注目
そのなかでも特に注目すべきものとして、第3位のTCS(印)は、ブランド価値が11%増の150億米ドルと堅調な伸びを示し、IBMとの差を急速に縮めています。TCSは、コアとなるデジタルトランスフォーメーションサービスへの需要が高まり、2020年第4四半期だけでも68億米ドル以上の案件獲得があるため、力強い成長を遂げています。特にTCSは、海外市場での展開が大きくなってきており、回復基調にある欧米市場からの引き合いが増加していることから、来年は、さらなる成長が期待されています。
一方で2位のIBMは、ブランド価値が24%減の161億米ドルとなり、3位のTCSとの差は2020年の77億米ドルから今年はわずか11億米ドルにまで縮まりました。非常に強力なブランドではあるものの近年の成長には陰りが見え始めています。
Infosysがビッグ4に躍進
Infosys(印)は、ブランド価値が19%増加して84億米ドルとなり、世界のITサービス企業のビッグ4に入り、トップ10の中で最も成長を遂げた企業となりました。この成長により、ブランド価値が6%減少して80億米ドルとなったCognizant(米)はランクキングを落としました。
COVID-19のパンデミックが発生する前から、Infosysは、データセキュリティやクラウドサービスなどに注力することの重要性を認識し、エンド トゥ エンドの顧客体験の提供に注力してきました。
急成長を遂げたLTI
LTI(印)は、2020年のブランド価値が37%増の9億8,200万米ドルを記録し、ITサービス企業のなかで最も成長をしたブランドとなっています。LTI は過去 5 年間、2 桁の成長を続けており、その勢いは止まりません。若い企業でありながら、競争の激しいIT分野で最も注目すべき企業のひとつとなっています。
健闘する日本のITサービス企業
NTT Dataは、昨年に続いてITサービス企業のトップ10にランクインしている唯一の日本企業です。また、LTIに次いでブランド価値が23%増加したCTC(日)は、成長性の高い企業として注目されており、特にCTCの近年の積極的なグローバル展開は目を見張るものがあります。
尚、今回のトップ25の中には、NTT Data、CTCのほかに富士通、NECの4社がランクインしていて、米国、インドに次いで3番目に多い国となっています。
COVID-19を契機に変革に取り組む市場
COVID-19により、多くの国で買い物に出かけることが制限され、商品を手に入れることが困難になったものの、オンラインでのデリバリー需要が急増したため、スーパーマーケットなどの小売店や飲食店、アパレルブランドはうまく対応できているようです。
この分野の企業は、オンラインショッピングへのシフトが加速することで、店頭での体験レベルが低下しているにもかかわらず、評価スコアは前年比で大幅に上昇し、概ねポジティブな評価を維持しているようです。
一方で、銀行や通信関連の企業の多くは、市場の評価と信頼度では下位グループにランクされており、あまり変化が見られませんでした。自社のサービスが当たり前のように利用され続けているという「いつも通りのビジネス」をしているだけでは顧客からの大きな評価は得られない状況になって来ているといえます。
近年、多くの企業でデジタルトランスフォーメーションが経営課題として掲げられており、またCOVID-19により企業活動の変革が急速に求められてきています。デジタルトランスフォーメーションとは、すなわち経営改革ですので、その会社の数だけ、解決策は違ってくるはずです。その時、どのようなITツールを活用して、どう解決をしていくのかといった提案力がITサービス企業には求められます。その中で、日本のITサービス企業が4社ランクインされているというのは、日本のITサービス企業のソリューション力が、市場でしっかりと認められているということではないでしょうか。
そして、顕著な成長をみせているITサービス企業のほとんどがインド企業であるということに大きな驚きとともに、近い将来、米国のシリコンバレーと並んで、インドがデジタルテクノロジーの中心地になっていくのではないかと感じました。