J-Startup CEO Interview】
「テクノロジーの力で、世界中の家族をもっと豊かに」
ユニファ株式会社
近年、世界のあらゆる業界でリモート化やデジタル化が進み、国境をこえた企業間連携の価値や可能性はますます高まっています。その一方で、実際に協業するに値する信頼できる質の高い海外企業を探すのは、言語や文化の壁もありなかなかハードルが高いのではないでしょうか。
そのような場合におすすめしたいのが、「国のお墨付きを受けた企業から探す」という方法です。日本においては、経済産業省が2018年から「J-Startup」というスタートアップ企業支援プログラムをスタートしました。このプログラムでは約10,000社に及ぶ日本のスタートアップの中から、厳正な審査を通過した「国のお墨付き」の企業を「J-Startup」と名付けて選抜しています。
※J-Startup企業一覧リンク
今回は、国から認められたJ-Startupの一社である「ユニファ株式会社」の代表取締役CEOの土岐泰之さんから話をうかがいました。
【保育施設にDXを】
ユニファ株式会社は「家族の幸せを生み出すあたらしい社会インフラを世界中で創り出す」を掲げ、テクノロジーによる保育施設のDX化支援をしています。
ユニファは、2013年創業以来の取り組みが評価され、2017年には全世界から10,000社以上のスタートアップが集う第1回Startup World Cup(主催:PEGASUS TECH VENTURES社)で優勝を果たすなど、世界的にも注目を集めている日本のスタートアップの一つです。
特に力を入れている事業の一つである保育施設領域では「スマート保育園・幼稚園・こども園構想」を掲げ、保護者との連絡帳のやりとりや園内での写真撮影と販売、子どもの昼寝中の見守りなど、あらゆる業務のICT化を進めています。具体的には、アプリやヘルスケアIoT、体動センサー、顔認識技術などのテクノロジーを駆使することで、保育関連業務の負荷を軽減させながら、保育者の時間と心のゆとりを生み出し、子ども達との豊かな関わりを創出することを目指しています。
「日本の親の多くが育児に忙殺されています。弊社のプラットフォームによって、親が子どもと過ごす時間のゆとりを生み、子どもの興味関心や健康情報を把握し、より多くの時間に子どもと向き合えるようになる。そのような社会を目指してサービス提供しています」(土岐さん)
ユニファ株式会社 代表取締役CEOの土岐泰之さん。土岐さん自身、夫婦共働きでの子育てが困難なため、育児に専念するために仕事を辞めた時期があったとのこと。「私は自分の家族にもらった愛情を、世界中の家族のために使い、世界中の家族を豊かにしたいと決意し、事業を始めました」(土岐さん)
【日本の保育園現場が抱える課題を一挙に解決】
現在の日本では、保育士の人材不足という課題が深刻化しています。 また、多くの親からは、保育施設に通う子どもの毎日の活動や様子を知りたいなどの要望が多く寄せられています。
そうした保育施設の現場の課題解決のために生まれたユニファ社の根幹となるサービスが、「ルクミー」という保育施設向け総合ICTサービスです。
具体的には次の3つのカテゴリ、12のプロダクトで構成されており、すべてをオールインワンで提供しています。
1.写真サービス
専用アプリから写真を撮影すると自動でアップロードされ、クラス分けや決済まで自動で行う。保護者は、顔認証技術によって、事前に子どもの顔を登録しておくと、優先的に自分の子どもの写真がレコメンドされる写真をアプリで見ることができ、データまたはプリントで購入可能。
2.ヘルスケア事業
日本の保育園では、お昼寝中の事故を防ぐために5分おきに体の傾きを目視でチェックし、手書きで記録している。そこで、医療機器のデバイスである体動センサーが体の向きを検知しタブレットに専用アプリで自動記録する。万が一、子どもがうつ伏せ状態がつづくと専用アプリからアラートが鳴るなど、「人間の目」と「医療機器」のダブルでチェックすることで見守りの質を向上。
また、コロナパンデミック禍で必須となった体温チェックも、センサーを活用することでアプリデータに体温の記録・グラフ化が可能に。
3.ICT事業
連絡帳や帳票、登降園記録、シフトなどのあらゆる情報管理をデジタル化し、業務負荷を軽減。
ルクミーを導入した保育施設の多くで業務負荷の軽減が実現しました。中には検温や写真撮影業務、登降園業務、シフト作成等に充てていた業務時間がサービス導入前後で一月あたり約65%にあたる120-130時間の削減につながったケースも。言い換えれば、このサービス導入によって、保育士1名分の業務時間を新たに創造できたことになります。
【インフラ支援を通じて教育の質の向上に貢献を】
ユニファが提供する保育施設のDX化支援がもたらすのは、単なる業務効率化にとどまらないと土岐さんはいいます。
「デジタルとダブルで子どもたちの状況を把握することにより、保育者の時間のゆとりだけでなく、心のゆとりも確保できます。そうすると写真撮影の余裕もでき、その販売の一部は保育施設にも還元できます。もちろん子どもと向き合う時間も増え、最終的には教育の質の向上にもつながっていくものと考えています」(土岐さん)
また、昨今のコロナパンデミック下での感染予防の観点から、手書きの連帳の電子管理化が推奨されるなど、「非接触型の社会を実現していく」というニーズへの貢献も期待されています。
【テクノロジーの力で、世界中の家族をもっと豊かに】
「子どもに関わる課題はまだまだ世界中にあるはず」という土岐さんが、現在海外で注目をしているのがタイを含めた東南アジアだといいます。
すでに、子どもの昼寝中の見守りチェックの体動センサーについては、シンガポールの保育施設からの要望を受け、実証実験の実績もあるとのこと。また、タイを含む東南アジアの市場調査も行い、タイの子どもや保育施設の数、今後の増加の見込みも調べているといいます。
「子どもの健康状態や子どもの興味関心の可視化によって、教育の質を向上できるという点は、世界共通だと考えています。そのためにも弊社の提供するプラットフォームのさらなる強靭化を進めています」(土岐さん)
日本の保育施設の運営会社は、すでにタイやベトナム、インドネシアなどでも活躍をしています。そうした保育施設のDX化が実現するひもそう遠くないでしょう。最後に、今後の海外展開の展望について土岐さんに伺いました。
「子どものバイタルデータや教育データの領域でしっかりしたデータベースを持っている企業は世界中を見てもまだありません。またチャイルドケア領域におけるAIもグローバルにはまだありません。それだけに挑みがいもありますし、こうした事業を通じて日本だけでなく東南アジアや世界が抱えている課題解決に貢献していきたいと考えています」(土岐さん)