【J-Startup CEO Interview】
「CRM×位置情報テクノロジー」でお客様の“成功”に貢献を
UPWARD株式会社
近年、世界のあらゆる業界でリモート化やデジタル化が進み、国境をこえた企業間連携の価値や可能性はますます高まっています。その一方で、実際に協業するに値する信頼できる質の高い海外企業を探すのは、言語や文化の壁もありなかなかハードルが高いのではないでしょうか。
そのような場合におすすめしたいのが、「国のお墨付きを受けた企業から探す」という方法です。日本においては、経済産業省が2018年から「J-Startup」というスタートアップ企業支援プログラムをスタートしました。このプログラムでは約10,000社に及ぶ日本のスタートアップの中から、厳正な審査を通過した「国のお墨付き」の企業を「J-Startup」と名付けて選抜しています。
※J-Startup企業一覧リンク
今回は、国から認められたJ-Startupの一社である「UPWARD株式会社」の代表取締役社長 CEOの金木竜介さんから話をうかがいました。
【日本初となる「デジタル地図サービス×CRM」のSaaSをリリース 】
2002年創業のUPWARD社は、2011年1月にCRMとデジタル地図サービスをシームレスに連携させたSaaS「UPWARD(アップワード)」を国内で初めてリリース。さらに2013年3月には世界No.1のクラウドCRMである米国セールスフォース社と資本提携(位置情報アプリケーションベンダーとしては国内初)し、SaaS事業を本格的に立ち上げます。
2016年4月、金木さんが代表取締役社長CEOに就任すると、それまで受託開発がメインだったビジネスモデルから現在のSaaSへの完全移行に踏み切りました。金木さんは「受託開発→SaaS」への大きなビジネス転換のきっかけの一つとして「クラウドの波」を挙げています。
「スマートフォンの爆発的な普及や回線速度の変化、3Gから4Gへの移行など、あらゆるテクノロジーの進化が一気に起こり、すべての技術がつながってクラウドが基盤となる中で、これからのビジネスはSaaSが主流になると確信しました。」(金木さん)
かつて、インターネットでのソフトウェア配信がASP(Application Service Provider)と呼ばれていた頃、インターネット上で使えるソフトウェアは全体のごく一部で、ほとんどがインストール型、オンプレミス型でした。そのような中、金木さんが注目したのは、セールスフォース社がCRMソフト「Salesforce」の提供を開始し、顧客データをクラウド環境でまとめて管理できるようにしたこと。このセンセーショナルな出来事をきっかけに、セールスフォース社のプラットフォームでアプリケーションを作りたいと考え始めたといいます。
UPWARD社のSaaSへの転換を決定づけたのが、多くのエンドユーザーが参加していたという2012年の『Dreamforce』の視察でした。
「ソフトウェアをシステムインテグレーターや販売代理店が仲介して販売するのではなく、直接エンドユーザーに提供する時代になると確信したことを今でも覚えています。しかもSalesforceのCRMはお客様のあらゆる情報を扱えるため、我々のGIS(地理情報システム)のテクノロジーを使えば、顧客データに紐づく住所データをリアルタイムに緯度経度変換し、様々な顧客属性データを地理的に可視化し、業務活用できるのではと考えました」(金木さん)
*訪問や電話など、フィールドセールスの顧客接点を自動で記録しリアルタイムに可視化。
AIによるネクストアクションをリコメンドするセールスエンゲージメントサービスが「UPWARD」である
【定量化ができればインサイトも可視化できる】
金木さんは、代表取締役社長CEOの就任後にビジョンやミッションも刷新。そこからは、フィールドセールスにおける顧客接点のデジタル化支援を重視するUPWARD社の姿勢をうかがい知ることができます。
ビジョン: Go Smarter, Anywhere (どこでも快適に働く、をつくる)
「Smart」はスマートなビジネスアプリケーションによって、すべての営業業務の活動がシームレスになっていくことを意味します。「Go」は活動する人・移動する人などのフィールドワーカーへ、という想いを、「Anywhere」はフィールドセールスがオフィスからだけでなく、自宅やカフェなど場所を問わず展開できる「work from anywhere」を、それぞれ込めている。
ミッション:現場のラストワンマイルを革新する
イノベーションを起こすべきは、最もデジタル化しにくい、オフラインの顧客接点、“現場のラストワンマイルである”という想いから。
金木さんによると、これからの現場をまとめるマネージャーには定量的かつ客観的でデータドリブンなマネジメント、オペレーションがより一層求められるといいます。
「優秀なマネージャーの中には、人間関係の構築能力に長けた営業感覚の鋭い人が多い反面、定量的かつ論理的なオペレーションが苦手であったり、あまり重視していない人も珍しくありません。しかし、野球に例えれば、優秀なバッターとなるためには、打率を重視し、ピッチャーの特徴や自身のボールへの反応の癖といった情報を把握する必要があるように、営業現場での気づき(インサイト)には定量化が欠かせません。そのために『UPWARD』では、オフラインの顧客接点を『標準化→定型化→定量化→インサイト提供』というプロセスで活用する支援をしています」(金木さん)
【「顧客接点の資産化」により安定した品質が可能に】
ところで、世の中にはすでにCRMやSFA(営業支援システム)のソフトウェアが沢山存在しています。他にはない「UPWARD」のユニークポイントをたずねると、金木さんは「位置情報とCRMをかけあわせることで、とりわけオフラインやフィールドセールス領域における顧客接点情報の企業の資産化、直感的な現場への示唆(インサイト)提供に貢献できること」を挙げました。
「効果的な顧客接点という観点では、デジタルコミュニケーションであるメールやビジネスチャットよりも、対面営業や電話の方が質が高いにもかかわらず、オフラインの顧客接点は記録化、構造的な情報化が難しく、多くの企業が活かしきれていません。そこで『UPWARD』で顧客接点を構造化、定量化した情報資産にすることで、「こういう顧客の場合はこういう接点だと利益を得やすい」などのインサイトのデータフィードバックができます。こうすることで、担当が変わった場合も同じ品質でのサービス提供が実現しやすくなります」(金木さん)
【飽和状態の市場でこそ重視される「オフラインの顧客接点」】
UPWARD社の顧客は大手企業を中心に300社を越え、業種業界も多岐にわたります。金木さんは、顧客に共通する特徴のひとつに、「オフラインの顧客接点が売上や顧客満足度に結びつきやすいこと」を挙げています。
「製造業やサービス業のように、市場が飽和状態でシェアの取り合いをしている業界は、プロダクトが差別化しにくく、顧客接点の質がより重視されることが多いです」(金木さん)
そのため、このようなケースの企業の多くが、たとえ全国展開をしていても地域密着型の営業を重視しているそうです。そして、フィールドセールスでの適切なタイミングによる顧客接点やアフターフォローによって、他社との差別化を図っています。
【お客様ではなく、お客様の「成功」にコミットを】
質の高い顧客体験を重視する姿勢は、UPWARD社の文化や社風にもあらわれています。
「一緒に働くメンバーには、とにかく気持のいい人材であることを重視します。英語で言うといわゆる『nice guy』『nice person』。『nice person』であるかどうかをみれば、その人のビジネスの可能性・発展性もわかります」(金木さん)
UPWARD社の掲げる「3つのValue」からも「Be nice」に通じる文化が込められています。
1.Commit to customer success
お客様ではなくお客様の「成功」へのコミットを重視する。担当者視点ではなく、お客様の成功の観点で取り組んでいく。
2.Always challenger, Always Day 1
いつでも挑戦者でい続け、やる時はつねに「Day 1」という気持ちで。
3.Be fair
フェアで、パートナーと対等であること。売りたい提案ではなく、本質的な価値を理解してもらうためのフェアな提案を徹底する。
今後、UPWARD社では海外、とりわけAPACへの事業展開も視野に入れているそうです。インタビューの最後に、その展望を伺いました。
「我々には、APACへの事業拡大をしている製造業の顧客が多くいます。その海外での業務支援をまずは実現したいと考えています。また、APACの多くは既にモバイルベースのビジネスをしているフィールドセールスパーソンがほとんどのため、オフラインでの顧客接点がより売上に昇華しやすい特徴があると推測しています。日本の企業のSaaSの多くが国内業務に特化したロジックを積んでいる一方で、我々のGPSやCRMの基盤はグローバルに対応しており、現地でのローカライズやマルチリンガル対応がしやすいと考えています。このようなテクノロジーや実績を活かし、APACでもお客様の成功へコミットし続けて参ります。」(金木さん)